Android Studio の Gradle ビルドシステムを使用すると、外部バイナリや他のライブラリ モジュールを依存関係としてビルドに含めることができます。依存関係は、マシン上またはリモート リポジトリで見つけることができます。推移的な依存関係が宣言されている場合、それも自動的に含まれます。このページでは、Android Gradle プラグイン(AGP)に固有の動作と構成を含め、Android プロジェクトで依存関係を使用する方法について詳しく説明します。Gradle の依存関係の概念をより深く理解するには、依存関係管理に関する Gradle のガイドをご覧ください。ただし、Android プロジェクトでは、このページで定義されている依存関係コンフィグレーションのみを使用する必要がある点に注意してください。
ライブラリまたはプラグインの依存関係を追加する
ビルド依存関係を追加して管理する最善の方法は、バージョン カタログを使用することです。これは、新しいプロジェクトでデフォルトで使用される方法です。このセクションでは、Android プロジェクトで使用される最も一般的な構成タイプについて説明します。その他のオプションについては、Gradle のドキュメントをご覧ください。バージョン カタログを使用するアプリの例については、Now in Android をご覧ください。バージョン カタログなしでビルド依存関係がすでに設定されており、マルチモジュール プロジェクトがある場合は、移行することをおすすめします。
ネイティブ依存関係(一般に使用されないもの)の追加と管理については、ネイティブ依存関係をご覧ください。
次の例では、リモート バイナリ依存関係(Jetpack Macrobenchmark ライブラリ)、ローカル ライブラリ モジュール依存関係(myLibrary
)、プラグイン依存関係(Android Gradle プラグイン)をプロジェクトに追加します。これらの依存関係をプロジェクトに追加する一般的な手順は次のとおりです。
バージョン カタログ ファイルの
[versions]
セクションに、必要な依存関係のバージョンのエイリアス(libs.versions.toml
)を追加します(プロジェクト ビューのgradle
ディレクトリまたは Android ビューの Gradle スクリプトの下)。[versions] agp = "8.3.0" androidx-macro-benchmark = "1.2.2" my-library = "1.4" [libraries] ... [plugins] ...
エイリアスにはダッシュまたはアンダースコアを含めることができます。これらのエイリアスは、ビルド スクリプトで参照できるネストされた値を生成します。参照は、カタログの名前(
libs.versions.toml
のlibs
部分)で始まります。単一バージョンのカタログを使用する場合は、デフォルト値の「libs」のままにすることをおすすめします。libs.versions.toml
ファイルの[libraries]
(リモート バイナリまたはローカル ライブラリ モジュールの場合)または[plugins]
(プラグインの場合)セクションに、依存関係のエイリアスを追加します。[versions] ... [libraries] androidx-benchmark-macro = { group = "androidx.benchmark", name = "benchmark-macro-junit4", version.ref = "androidx-macro-benchmark" } my-library = { group = "com.myapplication", name = "mylibrary", version.ref = "my-library" } [plugins] androidApplication = { id = "com.android.application", version.ref = "agp" }
一部のライブラリは、ライブラリのファミリーとそのバージョンをグループ化した公開済みの部品構成表(BOM)で入手できます。バージョン カタログとビルドファイルに BOM を含めて、BOM にバージョンの管理を任せることができます。詳細については、部品構成表を使用するをご覧ください。
依存関係を必要とするモジュールのビルド スクリプトに、依存関係のエイリアスの参照を追加します。ビルド スクリプトからエイリアスを参照する場合は、エイリアスのアンダースコアとダッシュをドットに変換します。モジュール レベルのビルド スクリプトは次のようになります。
Kotlin
plugins { alias(libs.plugins.androidApplication) } dependencies { implementation(libs.androidx.benchmark.macro) implementation(libs.my.library) }
Groovy
plugins { alias 'libs.plugins.androidApplication' } dependencies { implementation libs.androidx.benchmark.macro implementation libs.my.library }
プラグインの参照にはカタログ名の後に
plugins
が含まれ、バージョンの参照にはカタログ名の後にversions
が含まれます(バージョンの参照は一般的ではありません。バージョンの参照の例については、同じバージョン番号の依存関係をご覧ください)。ライブラリ参照にはlibraries
修飾子が含まれていないため、ライブラリ エイリアスの先頭にversions
またはplugins
を使用できません。
依存関係の設定
dependencies
ブロックで、複数の依存関係構成のうちの 1 つ(上記の implementation
など)を使用して、ライブラリ依存関係を宣言できます。それぞれの依存関係構成は、依存関係の使用方法についてのさまざまな指示を Gradle に与えます。次の表は、Android プロジェクトで依存関係に使用できる各構成の説明です。
構成 | 動作 |
---|---|
implementation |
Gradle は依存関係をコンパイル クラスパスに追加し、また依存関係をビルド出力にパッケージ化します。モジュールで implementation 依存関係を構成している場合、Gradle はモジュールの依存関係がコンパイル時に他のモジュールに通知されないようにします。つまり、現在のモジュールに依存する他のモジュールは、この依存関係を利用できません。この依存関係構成を |
api |
Gradle は依存関係をコンパイル クラスパスとビルド出力に追加します。モジュールに api 依存関係が含まれている場合、Gradle はモジュールの依存関係を他のモジュールに推移的にエクスポートします。この場合、他のモジュールは実行時とコンパイル時の両方で依存関係を利用できるようになります。この構成は、他の上流コンシューマに推移的にエクスポートする必要がある依存関係のみを対象として慎重に使用してください。 |
compileOnly |
Gradle は、コンパイル クラスパスのみに依存関係を追加します(ビルド出力には追加されません)。これは、Android モジュールを作成しており、コンパイル時には依存関係が必要であるものの、実行時にはなくても構わない場合に便利です。たとえば、コンパイル時アノテーションのみを含むライブラリに依存している場合(通常はコードの生成に使用されますが、ビルド出力には含まれないことが多い)、そのライブラリを compileOnly にマークできます。
この構成を使用する場合は、実行時に依存関係が利用可能かどうかを確認する条件をライブラリ モジュールに含める必要があります。次に、依存関係が提供されていなくても構成が機能するように、その動作をスムーズに切り替える必要があります。これは、重要でない一時的な依存関係を追加しないことにより最終的なアプリのサイズを削減するのに役立ちます。
注: |
runtimeOnly |
Gradle は、実行時に使用できるように、ビルド出力だけに依存関係を追加します。つまり、コンパイル クラスパスには追加されません。
これは Android ではほとんど使用されませんが、ロギング実装を提供するためにサーバー アプリケーションでよく使用されます。たとえば、ライブラリで実装を含まないロギング API を使用できます。そのライブラリの使用者は、そのライブラリを implementation 依存関係として追加し、実際のロギング実装で使用する runtimeOnly 依存関係を含めることができます。 |
ksp |
これらの構成は、コードがコンパイルされる前に、コード内のアノテーションやその他のシンボルを処理するライブラリを提供します。通常、コードを検証したり、追加のコードを生成したりして、記述する必要があるコードを減らします。 このような依存関係を追加するには、 JAR ファイルに次のファイルが含まれる場合、Android Gradle プラグインは、依存関係がアノテーション プロセッサであると想定します。
プラグインは、コンパイル クラスパス上のアノテーション プロセッサを検出すると、ビルドエラーを生成します。
使用する構成を決定する際は、次の点を考慮してください。
アノテーション プロセッサの使用の詳細については、アノテーション プロセッサを追加するをご覧ください。 |
lintChecks |
この構成を使用すると、Android アプリ プロジェクトのビルド時に Gradle で実行する lint チェックを含むライブラリを含めることができます。
|
lintPublish |
Gradle で lint チェックを lint.jar ファイルにコンパイルして AAR にパッケージ化するには、Android ライブラリ プロジェクトでこの構成を使用します。これにより、AAR を使用するプロジェクトもそれらの lint チェックを適用するようになります。以前に lintChecks 依存関係構成を使用して公開 AAR に lint チェックを含めていた場合は、その依存関係を移行して、代わりに lintPublish 構成を使用する必要があります。
Kotlindependencies { // Executes lint checks from the ":checks" project at build time. lintChecks(project(":checks")) // Compiles lint checks from the ":checks-to-publish" into a // lint.jar file and publishes it to your Android library. lintPublish(project(":checks-to-publish")) } Groovydependencies { // Executes lint checks from the ':checks' project at build time. lintChecks project(':checks') // Compiles lint checks from the ':checks-to-publish' into a // lint.jar file and publishes it to your Android library. lintPublish project(':checks-to-publish') } |
特定のビルド バリアントの依存関係を構成する
上記のすべての構成は、すべてのビルド バリアントに依存関係を適用します。これに対し、特定のビルド バリアントのソースセットまたはテスト用のソースセットのみに依存関係を宣言する場合は、構成名の先頭を大文字にして、その先頭に対象のビルド バリアントまたはテスト用のソースセットの名前を付加する必要があります。
たとえば、implementation
構成を使用して「free」プロダクト フレーバーにのみリモート バイナリ依存関係を追加するには、次のようにします。
Kotlin
dependencies { freeImplementation("com.google.firebase:firebase-ads:21.5.1") }
Groovy
dependencies { freeImplementation 'com.google.firebase:firebase-ads:21.5.1' }
ただし、プロダクト フレーバーとビルドタイプを組み合わせたバリアントに依存関係を追加する場合は、コンフィグレーション名を初期化する必要があります。
Kotlin
// Initializes a placeholder for the freeDebugImplementation dependency configuration. val freeDebugImplementation by configurations.creating dependencies { freeDebugImplementation(project(":free-support")) }
Groovy
configurations { // Initializes a placeholder for the freeDebugImplementation dependency configuration. freeDebugImplementation {} } dependencies { freeDebugImplementation project(":free-support") }
ローカルテストとインストルメンテーション テストに implementation
依存関係を追加するには、次のようにします。
Kotlin
dependencies { // Adds a remote binary dependency only for local tests. testImplementation("junit:junit:4.12") // Adds a remote binary dependency only for the instrumented test APK. androidTestImplementation("androidx.test.espresso:espresso-core:3.6.1") }
Groovy
dependencies { // Adds a remote binary dependency only for local tests. testImplementation 'junit:junit:4.12' // Adds a remote binary dependency only for the instrumented test APK. androidTestImplementation 'androidx.test.espresso:espresso-core:3.6.1' }
ただし、この状況では、一部の構成は効果がありません。たとえば、他のモジュールが androidTest
に依存できないため、androidTestApi
構成を使用すると、以下の警告が表示されます。
WARNING: Configuration 'androidTestApi' is obsolete and has been replaced with 'androidTestImplementation'.
依存関係の順序
依存関係をリストする順序は、それぞれの優先度を示します。たとえば、1 番目のライブラリは 2 番目のライブラリより優先度が高く、2 番目は 3 番目より優先度が高くなります。この順序は、ライブラリからアプリにリソースをマージする場合、またはマニフェスト要素をマージする場合に重要です。
たとえば、プロジェクトで以下を宣言したとします。
LIB_A
への依存関係とLIB_B
への依存関係(この順序)LIB_A
はLIB_C
とLIB_D
に依存(この順序)LIB_B
もLIB_C
に依存
この場合、依存関係の順序を展開すると次のようになります。
LIB_A
LIB_D
LIB_B
LIB_C
これにより、LIB_A
と LIB_B
はいずれも LIB_C
より優先され、LIB_D
は LIB_B
よりも優先度が高くなります。これは、依存元の LIB_A
の優先度が LIB_B
より高いためです。
異なるプロジェクトのソースや依存関係のマニフェストをマージする方法については、複数のマニフェスト ファイルをマージするをご覧ください。
Google Play Console の依存関係情報
アプリをビルドすると、アプリにコンパイルされるライブラリ依存関係を記述するメタデータが AGP に含まれます。アプリをアップロードすると、Play Console でこのメタデータが検査され、アプリで使用されている SDK と依存関係に関する既知の問題のアラートが提供されます。また、問題を解決するための実用的なフィードバックが提供される場合もあります。
データは圧縮され、Google Play の署名鍵で暗号化されて、リリースアプリの署名ブロックに保存されます。この依存関係ファイルを保持して、安全で優れたユーザー エクスペリエンスのために役立てることをおすすめします。オプトアウトするには、モジュールの build.gradle.kts
ファイルに次の dependenciesInfo
ブロックを含めます。
android {
dependenciesInfo {
// Disables dependency metadata when building APKs.
includeInApk = false
// Disables dependency metadata when building Android App Bundles.
includeInBundle = false
}
}
依存関係に関する Google のポリシーと潜在的な問題について詳しくは、アプリでサードパーティの SDK を使用する場合のサポートページをご覧ください。
SDK 分析情報
Android Studio では、次の問題が適用される場合、バージョン カタログ ファイルと Google Play SDK Index の公開 SDK の [Project Structure] ダイアログに lint 警告が表示されます。
- SDK が作成者によって古いとマークされている。
- SDK が Google Play ポリシーに違反している。
古いバージョンを使用すると Google Play Console に今後公開できなくなる可能性があるため、こうした警告は該当する依存関係を更新するためのシグナルになります。
バージョン カタログなしでビルド依存関係を追加する
バージョン カタログを使用して依存関係を追加、管理することをおすすめしますが、シンプルなプロジェクトでは必要がない場合があります。バージョン カタログを使用しないビルドファイルの例を次に示します。
Kotlin
plugins { id("com.android.application") } android { ... } dependencies { // Dependency on a remote binary implementation("com.example.android:app-magic:12.3") // Dependency on a local library module implementation(project(":mylibrary")) }
Groovy
plugins { id 'com.android.application' } android { ... } dependencies { // Dependency on a remote binary implementation 'com.example.android:app-magic:12.3' // Dependency on a local library module implementation project(':mylibrary') }
このビルドファイルは、「com.example.android」名前空間グループ内に存在するバージョン 12.3 の「app-magic」ライブラリへの依存関係を宣言しています。リモート バイナリ依存関係の宣言は、次の省略形です。
Kotlin
implementation(group = "com.example.android", name = "app-magic", version = "12.3")
Groovy
implementation group: 'com.example.android', name: 'app-magic', version: '12.3'
このビルドファイルは、「mylibrary」という名前の Android ライブラリ モジュールへの依存関係も宣言します。この名前は、settings.gradle.kts
ファイルの include:
で定義されているライブラリ名と一致する必要があります。アプリのビルド時に、ビルドシステムはライブラリ モジュールをコンパイルし、その結果を APK にパッケージ化します。
ビルドファイルでは、Android Gradle プラグイン(com.application.android
)の依存関係も宣言します。同じプラグインを使用するモジュールが複数ある場合、すべてのモジュールのビルド クラスパスに存在できるプラグインのバージョンは 1 つだけです。各モジュールのビルドスクリプトでバージョンを指定する代わりに、ルートビルド スクリプトにバージョンとともにプラグインの依存関係を含め、適用しないことを示します。apply false
を追加すると、Gradle にプラグインのバージョンをメモするように指示しますが、ルートビルドで使用しないように指示します。通常、ルートビルド スクリプトは、この plugins
ブロックを除いて空です。
Kotlin
plugins { id("org.jetbrains.kotlin.android") version "1.9.0" apply false }
Groovy
plugins { id ‘com.android.application’ version ‘8.3.0-rc02’ apply false }
単一モジュール プロジェクトの場合は、モジュール レベルのビルド スクリプトでバージョンを明示的に指定し、プロジェクト レベルのビルド スクリプトを空のままにできます。
Kotlin
plugins { id("com.android.application") version "8.3.0" }
Groovy
plugins { id 'com.android.application' version '8.3.0-rc02' }